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実践的糖尿病教育

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Topics1.教育入院する際の錯覚

Topics1. 教育入院する際の錯覚(1)

糖尿病の教育入院が終わって、退院する患者さんに聞きます。

「皆さん、今回の入院どうでした?」
「やあ、素晴らしかったです!」
「食品の栄養素を中心にあんなに詳しく教わったことはなかったわ」
「私も糖尿病の合併症があんなに怖いものだとは知りませんでした」
「今度は気を引き締めて頑張ってきます」
「それは良かったですね」

と送り出す。で、次の外来。

「HbA1cや血糖、体重も下がって良かったですね」
「ええ、入院した甲斐がありましたよ」

そして3ヶ月後の外来。

「体重元に戻ってきましたね。血糖も。どうしたんですか?」
「おかしいなぁ。ちょっとアルコールが増えましたかね。」
「頑張ってきます」

こんなやりとりがあなたの外来で繰り返されていませんか?
ちょっと考えてみてください。

Topics1. 教育入院する際の錯覚(2)

前のページで行われていることって日常外来でよく見受けるケースだと思いますが、これってなんなんでしょうか?

一時的にデータは改善しているから教育入院の成果はあると、医者やコメディカルスタッフ、そして大切な時間とお金を使った患者さんは思います。

でも本当に「教育」のおかげで血糖は改善したのでしょうか?

まったく教育を施さなくても、2週間入院していれば絶対血糖やHbA1cは下がります。
一つは、食事制限や、間食・アルコールの節制が出来るようになるからです。

これで血糖が下がります。これが一番大きいです。
次に食事制限や、間食・アルコールの節制だけで血糖が下がらない患者さんにインスリンや血糖降下剤等の薬剤が始まるからです。

本来インスリンや血糖降下剤が必要な患者さんなのになかなか薬剤を開始するのに納得してくれない方がいらっしゃいます。
そういう方でも入院して食事を整えても血糖が下がらなければそれらの薬剤を開始するの説得力を持ちます。

でもこのように血糖が下がってもこれは純粋に医学的アプローチの結果であって、「教育学的」に何かをしたかどうかの目安にはなりません。そしてこれらなんら教育的意味を持たない入院の退院後、患者さんの生活は元の生活に戻っていますから、一定期間後に再び血糖やHbA1cが上昇して元のレベルに戻ります。

Topics1. 教育入院する際の錯覚(3)

もちろん一生懸命糖尿病についての知識を増やすタイプの「教育」入院も全く意味がないとは思いません。
知識という面での成果をあげることは出来るでしょうし、必要な治療方法に変更することもとても大事なことです。

医学的に見ても一時的に血糖を下げて糖毒性をとるのは役に立つでしょう。

でも退院後本当にセルフケア行動を変えるのに役立つ「動機付け」、「やる気を上げる」のにどれだけ力があるのでしょう?
それに何十年にも亘る長い糖尿病の経過の中で数ヶ月血糖が下がる意味は大した意味はないのではないでしょうか?

多くの施設で、自ら施している「教育入院に成果がある」と信じ込んでいますが、「教育」の成果を評価していないのに、HbA1cや血糖という「医学的指標」で「教育」の評価をするなんてナンセンスです。

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